梢子逍遥記

色々書く

学問的多様性について~法学部と医学部を中心に~

医局に抑留されていると実験や書類作業の合間にボケーっとなんか考えることがあります。

というわけで(?)本日2度目の記事を書きました。

タイトルからわかるように今回はお勉強に関する話題なのでそういうのが無理な方は回れ右で。

 

まず、学問的多様性という言葉ですが、これは明確な用語ではなく、主に私が使っている言葉です。

意味としては「(主に大学生・大学院生が)勉強をする場合、自分の興味関心等に応じ専門分野であるか否かを問わず幅広く勉強すること」と定義付けています。

例えば私は医学系研究科の博士課程ですが、法学・政治学・経済学・言語学・数学・物理学という塩梅に色々な分野に手を出しています。学問的多様性を体現しているのです。

しかし、この学問的多様性、多くの大学生・大学院生は中々実践しておりません。

特に表題にある法学部・医学部は。

 

なぜ、法学部・医学部にはあまり学問的多様性がないのかにはしっかりと理由があります。

簡潔に言うといずれも進路にかかわるものです。

法学部の説明が分かりやすいと思うのでこちらをご説明します。

法学部の場合、進路として他学部と違い、法曹や公務員(教員ではなく官公庁勤め)の路線がとりやすいです。

もちろん法学部以外からもこれらの進路をとることは可能ですが、

試験科目をみると

国家総合職 行政法民法憲法行政学 マクロ経済・ミクロ経済 等

司法試験 行政法民法憲法・刑法・商法・民訴法・刑訴法 等

となっています。

つまり学部の授業で法律科目をやっている法学部生は他学部に比べて有利なのです。

次に、法学部のカリキュラムですが、各法律科目とも民法1つで2単位というわけではなく(内容が分厚いので)、民法は1部~4部まで4分割されていたり、刑法も1部・2部(総論・各論)で2分割されています。

そして大抵の大学では必修に民法1・2部、刑法1部など試験科目の一部が組み込まれています。

ここで公務員や法曹を目指す人は、選択科目としてほかの試験範囲になっている科目を取り、試験範囲外の法学系科目(例えば医事法・金商法や日本外交史や政治思想系)は単位数合わせに楽単のものを選び、試験勉強に邁進する、というのが僕の観測範囲では一般的でした。

法学部専門科目は実に多岐に渡ります。

政治学系、政治思想系、法制史、法哲学、さらに医事法などの公務員試験範囲外の法律分野など。

さらに当然、他学部の授業も個人の興味でとれるわけです。

それゆえ本来的には学生の数だけ異なる学問的背景をもった人物が大学から輩出されるはずなのです

しかし、実際には公務員試験・司法試験の効率重視の為に勉強の比重を試験範囲科目偏重になることが多く、学問分野が固定された人が量産されているのです。

私のいた東京大学ですら。

 

もちろん、将来進路を考えてそのような選択をとることも1つの戦略ではあると思います。

しかし万人が万人、同じ学問分野しか、しかも試験範囲に沿ってでしか勉強しないのはいかがなものでしょう。

 法学部の場合、医事法、医療政策、公共政策、財政学をやることで医療政策や医療法に関する知識を有した官僚、医療訴訟のできる弁護士になれますし、

国際法、宇宙法、資源に関する理系学部の専門分野を勉強することで資源交渉をする外務・経産官僚やエネルギー系の会社で活躍できますし、

環境法・環境に関する理系専門分野を勉強することで環境省や環境問題の会社や環境系訴訟の専門家にもなれるわけです。

試験科目だけ勉強して官公庁勤め・法曹になれても自分の強みがないと、組織の中で差別化を図ることができません。(筆記試験が圧倒的に高いとかならまだしも・・・って感じですがその手の人は大抵ほかの事も勉強してます。僕みたいに。)

 

 

視野を広げませんか?               医局より こずえ